道の途中 4

「そうだった!」

急にスイッチが入ったように、リカが時計を見る。土曜の朝にしても二人だけの頃ならさておき、もうだいぶいい時間だ。

「ごめん!」
「え?なんで?」
「もっと早く起こしてくれればよかったのに!」

目を丸くして固まった大祐は、口に入れていたものを飲み込んでから何度も目を瞬く。

「あの、なんで謝るの?」
「だって、もっと早く起こしてくれたら色々できたのに!っていうか、大祐さんも疲れてるのに!」

ああもう、と自分で自分に怒っているリカの肩をとんとん、と叩いた。

「リカ。落ち着いて」
「だって」
「うん。いっぺん、おちつこ」

そういわれても、眉間にしわを寄せたリカが落ち着けるわけもない。大祐は開きかけたリカの口にひょい、とミニトマトを放り込んだ。

「トマト。これ、甘いね」
「……ん?!んん」

子供たちも食べるように、小さいトマトは糖度の高いものをよく選ぶ。
そのトマトを食べながらにこにこと大祐はうなずいた。

「でね。いいんだよ。リカが寝坊したって。今日はお休みなんだよ。お母さんのリカもディレクターのリカさんもお休みの日だから大丈夫」

でも。
リカがそういう前に大祐は思い切り腕を伸ばした。

「俺も今日は仕事の俺は休み!お父さんの俺は休みなのがもったいないけどさ。なので、休みじゃないのは奥さんのリカとダンナの俺だけ。たまにはそれもいいじゃん?」

少しの間。
リカも大祐も、その癖だけはお互いに相変わらずで、その後に小さく何度もうなずいた。

「わかった。じゃあ、もうごめんはしない」
「うん。そうしよう。それでどうするか改めて決めようよ」

頷いて。
ようやく振出しに戻って。

休みの予定に戻る。

「まず、リカが休みの間に行きたいところとか、やりたいこととかは?」
「あっ……。決めるって言ってたけど……。違う、待って待って。えとね、模様替え?違うな、もうちょっと家の中をこう……」
「あー。何となくわかった。もうちょっと、こう、部屋の中を変えたいってことだよね?」

リカと子供たちだけでは今ある部屋のレイアウトの中で大きく変えることはできないが、子供たちがいなくて、大祐がいるならと思うのはわからなくもない。

なるほど、と頷きながら揃って部屋の中を見回す。

頑張って片づけをしているにせよ、子供たちが描いた絵だったり、保育園で作った作品だったり、そういうものがリビングに置かれている。そのほかにも、子供たちの服や保育園にもっていくリュックもある。

「わかった。それはどうしたいのか、部屋を見ながら考えよう。あとは?」
「えと、うーん、日帰りでいいから温泉?行きたいかなぁ」
「なるほど。リカがあの駅の近くにスーパー銭湯ができたって言ってたけど、そういうのもあり?」
「全然あり!」

温泉でテンションが上がったリカを見て、大祐は確実に連れて行こう、と心に決めた大祐に今度はリカが詰め寄る。

「大祐さんは?私にだけ聞くってことはないよね?」
「あー、でも、俺も似たようなもんかなぁ。服を買いに行きたいのとあとは休みっぽいことができたらいいなぁって」
「服?大祐さんの?」

頷いた大祐に、首をひねりながらもうなずいて、さらに休みっぽいこと、と何度もつぶやく。

「そう。何でもいいんだよ。お祭りにいく、でも花火見に行く、でも。ほら、ここしばらくそういうのより、子供たち中心だったし」
「それは……うん。わかった。でも、お祭りはちょっと無理じゃないかなぁ……。調べてみるけど」
「いや、別にたとえだから!えーと、うん。夢の国でもなんでもいいんだよ。ほんとに」

大祐のいうものが同じかどうかはわからないので、つい、確認するくせも相変わらずだ。
話の順番はだいぶ普通に近づいたような気もするが、それでもやっぱりおかしい時はある。

「つまり、えーと……?」
「……まず、朝ごはん食べちゃおう」
「……わかった」

どうも最近の二人は、自分たちのことが後回しすぎてなかなか話が進まないらしい。

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2 Comments

  1. ご無沙汰しています!
    いらっしゃいませ。

    まだ細々ですが書き続けておりましたよ。読んでいただけて嬉しいです。
    コードブルーについてもありがとうございます。
    まだすこしなのですが、細々ですが上げていきますので、また時々覗いていただけるとうれしいです。
    お仕事、お疲れ様でした。
    私もつい最近職場が変わったばかりでして。。。
    色々ありますよね。それでも楽しみがあれば頑張れます!
    そしてそんな楽しみの少しにでもなれたら嬉しいです

    よろしくおねがいします!

  2. chii

    狐さん、お久しぶりです。
    pixivから狐さんの追っかけをし
    こちらのサイトに辿り着きました。
    「空飛ぶ広報室」が大好きで!
    しかも、狐さんの空リカがほんっとに
    好きです。
    もう、ドラマから6年経過しましたが
    空飛ぶ広報室を書かれる書き手の方も
    随分と少なくなってますが…
    ずーっと心の中で、狐さんにまた
    連載して欲しいなぁ…と勝手に思っておりました。←スミマセン。。
    私事で恐縮ですが…
    先週、13年勤めた会社を病気のため
    やむを得ず退職しまして…。
    一番に時間を使ってやりたかった事が
    狐さんの「空飛ぶ広報室」を
    もう一度最初から読み直すこと!
    でした(^^)
    狐さんの描かれる空リカの世界観と
    ストーリーは、本当に素敵で
    何度も読み返したくなる作品です!
    ハニートラップ♡たまりません!
    また、狐さんの空飛ぶ広報室が
    更新されていて、嬉しかったです!
    ありがとうございます。
    こちらも続き楽しみにしてます。
    できれば できれば〜
    「コード・ブルー」の藍沢と白石で
    お話を書いてくださると…
    泣いて喜びます!!
    なかなか、くっつかない2人なので
    狐さんワールド内で、
    空飛ぶ広報室のような長編小説を
    読んで見たいです。
    めちゃくちゃ、生意気なことを言って
    スミマセン…。

    本当に…
    狐さんの作品、大好きです!
    FLEXシリーズも続きは期待しても
    良いですか?

    久しぶりに狐さんの作品に
    お目に書かれて嬉しかったです(泣)

    これからもずーっと応援しています!

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